部活動への保護者の関わり方|適切なサポートと見守りのバランス
「子どもの部活動に、親はどこまで関わるべき?」 「他の保護者との付き合い方がわからない…」
子どもが部活動を始めると、保護者としてどう関わればいいか悩む方は多いでしょう。
笹川スポーツ財団の2024年の調査によると、保護者が運動部活動に期待することの上位は「スポーツを楽しむ」(中学期85.1%)、「体力をつける」(73.4%)、「礼儀・マナーの習得」(64.4%)でした。一方で、関わり方を間違えると、子どものやる気や成長を妨げてしまうこともあります。
この記事では、スポーツ庁のガイドラインや専門家の知見をもとに、適切なサポートの仕方と見守りのバランスについて解説します。
保護者の役割は「サポーター」
主役は子どもと指導者
日本サッカー協会(JFA)は「サッカーの主役は子ども自身」という理念を掲げています。これはサッカーに限らず、あらゆる部活動に当てはまる考え方です。
部活動の主役は、あくまで子どもです。そして、指導するのは顧問の先生やコーチです。保護者はあくまで「サポーター」というポジション。子どもたちを見守る姿勢が大切です。
スポーツ庁の「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(令和4年)でも、活動方針や練習時間・頻度を公表し、保護者・地域の理解を促進することが求められています。まずは子どもの部活動の方針を理解するところから始めましょう。
保護者ができる3つのサポート
1. 生活面のサポート
- 栄養バランスの取れた食事
- 十分な睡眠時間の確保
- 体調管理
スポーツ庁のガイドラインでは、「活動時間は最大でも1週間に16時間が限度」とされています。子どもが十分な休息を取れるよう、生活リズムを整える手助けをしましょう。
2. 精神面のサポート
- 話を聞いてあげる
- 頑張りを認める
- 過度なプレッシャーをかけない
ワシントン大学のジョン・ゴットマン教授の研究によると、ポジティブな声かけと改善点の指摘の理想的な割合は5対1です。この「5対1の法則」は、子どものスポーツ場面にも当てはまります。褒める言葉や感謝の言葉を意識的に増やすことで、子どもの「エモーショナル・タンク」(心のエネルギー)が満たされ、よりよいパフォーマンスにつながります。
3. 環境面のサポート
- 必要な道具の準備
- 送迎(必要な場合)
- 保護者会への参加
保護者がやりがちな「NG行動」
良かれと思ってやっていることが、実は子どもの負担になっていることがあります。スポーツ庁の全国体力・運動能力、運動習慣等調査(令和4年度)では、中学生の約5人に1人が運動やスポーツを「嫌い」と回答しています。さらに、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)が全国の小中学生400名を対象に行った調査では、現在運動が嫌いな子どもの36.3%が幼少期には運動が「好き」だったと回答しており、成長過程での周囲からのプレッシャーが影響している可能性が示唆されています。運動が苦手な子どもの68.8%が「他人と比べられること」に抵抗感を示しており、保護者の何気ない言動が子どものスポーツ離れにつながりかねないのです。
1. 過度な口出し
- 「もっとこうした方がいい」と技術的なアドバイスをする
- 練習や試合に毎回顔を出す
- 顧問の指導方針に口を出す
→ 指導は顧問に任せましょう。 JFAの「めざせ!ベストサポーター」ハンドブックでも、保護者は「子どもに考えさせ、判断させ、プレーすることを認める」ことが大切だとされています。家では話を聞いてあげるだけで十分です。
2. 他の子どもとの比較
- 「〇〇君はレギュラーなのに」
- 「あの子より練習してるのに」
→ 比較は子どもの自信を奪います。 児童精神科医の古荘純一氏によれば、子どもたちは「親が自分をどう見ているのか」という判断基準で自分自身の価値を決めており、子ども時代の失敗体験やがっかりした体験は「自分はできない」というトラウマになり得るといいます。その子自身の成長に目を向けましょう。
3. 結果だけを求める
- 「勝ったの?負けたの?」だけを聞く
- 試合に出られないことを責める
- レギュラーになることばかり期待する
→ 過程や努力を認めることが大切です。 小・中学校の保護者362名を対象にした研究(CiNii Research)では、保護者が「個人の成長」を期待するとスポーツ活動量が増加し、母親の肯定的態度も向上する一方、「技術向上」のみに期待が集中すると母親の肯定的態度が低下するという結果が出ています。結果が出なくても成長していることはたくさんあります。
4. 子どもの代わりに行動する
- 顧問への連絡を親が代わりにする
- 子どもの悩みを本人の代わりに相談する
→ 自分で解決する経験も成長の一部です。 スポーツ庁のガイドラインでも、部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」活動と位置づけられています。見守りながら、本当に必要なときだけ手助けしましょう。
保護者会・当番制への関わり方
部活動の保護者会とは
部活動によっては、保護者会が組織されていることがあります。
主な活動内容:
- 連絡係(グループLINEなど)
- 送迎の調整(車出し)
- 試合時の付き添い・見守り
- 差し入れ・昼食の準備
- 会計管理
保護者の負担の実態
笹川スポーツ財団の2021年調査(小学生の保護者2,400人が対象)では、母親の負担感が高い項目として以下が挙げられています。
- 指導者・保護者の送迎:66.7%
- 食事・飲み物の用意:64.4%
- 観戦場所の確保:62.0%
- 会費集金・管理:59.0%
また、母親と父親の関与には大きな格差があり、子どもの送迎では母親89.2%に対し父親56.4%(32.8ポイント差)、ユニフォームの洗濯では母親84.4%に対し父親21.2%(63.3ポイント差)という結果でした。
負担が大きいときは
保護者の負担が大きすぎる場合は、遠慮せず見直しを提案してみましょう。同調査では、当番制度に対する「大変なイメージ」が、子どものスポーツ活動参加への障壁にもなっていることが指摘されています。
- 当番制の頻度を減らす
- 役割を細かく分担する
- できる範囲で協力する
- 父親も含めた分担の見直し
全国PTA連絡協議会でも、PTA活動は任意参加が原則とされています。「全員が同じだけ負担する」ではなく、できる人ができる範囲でという考え方も大切です。
保護者同士のトラブルを避けるために
よくあるトラブルの原因
- レギュラー争いへの介入
- 「熱心な親」と「そうでない親」の温度差
- 役割分担の不公平感
- SNS・グループLINEでの誤解
トラブルを避けるポイント
1. 子どものことで他の保護者を批判しない
子ども同士のトラブルに親が介入すると、問題が大きくなりがちです。
2. 適度な距離感を保つ
仲良くなりすぎると、かえってトラブルの原因になることも。
3. グループLINEは連絡用と割り切る
雑談が増えると、トラブルのもとになります。必要な連絡のみに絞りましょう。
4. 困ったときは顧問や相談窓口に
保護者同士で解決できないときは、顧問の先生に相談するのも一つの方法です。暴力・暴言・ハラスメントなど深刻な問題がある場合は、日本スポーツ協会(JSPO)の「スポーツにおける暴力行為等相談窓口」に通報することもできます。
子どもの話の「聞き方」
試合や練習の後に
子どもが帰ってきたら、結果ではなく気持ちを聞いてみましょう。
- ❌「勝った?負けた?」
- ⭕「今日はどうだった?」「楽しかった?」
JFAも保護者に対し、「失敗を責めず上手くいったことをほめる」「結果よりもプロセスを評価する」ことを推奨しています。
悩んでいるときは
子どもが悩んでいる様子なら、まず話を聞くことが大切です。
- すぐに解決策を出さない
- 否定しない
- 「大変だったね」と共感する
「エモーショナル・タンク」の考え方では、助言のタイミングも重要です。試合直後は避け、人前ではなく時間と場所を選び、子どもの「聞く意思」を確認してから話すことが推奨されています。
話を聞いてもらえるだけで、気持ちが楽になることも多いものです。
何も言わないときは
思春期の子どもは、親に多くを語らないこともあります。
- 無理に聞き出そうとしない
- 「いつでも話聞くよ」と伝えておく
- 普段の様子を見守る
試合・発表会での応援マナー
基本的なマナー
JFAの「めざせ!ベストサポーター」ハンドブックでは、保護者の観戦マナーとして以下のポイントが挙げられています。
- 指定された場所で観戦する
- 撮影ルールを守る
- 相手チームを「敵」ではなく「相手」と呼ぶ
- 勝っても負けても大きな拍手。良いプレーには味方・相手関係なしに拍手
- 審判や指導者への批判をしない
応援の仕方
- 子どもが萎縮するような応援はNG
- 「楽しんで!」という気持ちで見守る
スポーツ庁のガイドラインでも、子どもがスポーツを「楽しむ」ことを通じて運動習慣を身につけることが重視されています。応援は「指示」ではなく「見守り」の姿勢で。
補欠・控えの子どもへの接し方
レギュラーになれない、試合に出られないことは、子どもにとって辛い経験です。
親がすべきこと
- 比較しない:「〇〇君は出てるのに」は禁句
- 努力を認める:結果が出なくても頑張っていることを伝える
- 長い目で見る:今すぐ結果が出なくても、成長は続いている
米国小児科学会のレポートでは、燃え尽き症候群の予防要因として「内発的動機の奨励」「長期的視野での育成」「外的な評価よりも内的な目標の優先」が挙げられています。子ども自身が「もっと上手くなりたい」と思える環境を、親が支えることが大切です。
避けるべきこと
- 顧問に「なぜ出さないのか」と詰め寄る
- 子どもの前で不満を言う
- 「部活やめたら?」と安易に言う
スポーツ庁は「勉強の時間はもちろん、趣味に充てる時間、友達や家族と過ごす時間、地域と交流する時間。そういったさまざまな時間が、子供たちを多面的に成長させます」と述べています。試合に出られなくても、部活動を通じて得られる経験や成長は数多くあります。
まとめ
保護者の部活動への関わり方は、「見守るサポーター」がベストです。
適切な関わり方:
- 生活面・精神面のサポートに徹する
- 過度な口出しを避け、指導は顧問に任せる
- 結果より過程を認める(ポジティブな声かけ5:改善の指摘1)
- 保護者同士は適度な距離感を保つ
- 子どもの話をしっかり聞く(タイミングも大切に)
子どもが部活動を通じて成長できるよう、温かく見守る姿勢を大切にしましょう。主役はあくまで子ども自身です。
参考資料:
- 学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン(令和4年12月)|スポーツ庁
- ガイドラインから読み解く子供目線の運動部活とは|スポーツ庁 Web広報マガジン
- 保護者視点で考える運動部活動の活動実態と地域連携・地域クラブ活動への移行(2024年12月)|笹川スポーツ財団
- 小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究 2021|笹川スポーツ財団
- スポーツペアレンティング講座|サカイク
- 保護者の役割 - リスペクト・フェアプレー|JFA
- めざせ!ベストサポーター ハンドブック|JFA
- スポーツ指導に高い期待を持つ保護者の特性|CiNii Research
- スポーツにおける暴力行為等相談窓口|日本スポーツ協会(JSPO)
- 令和4年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果|スポーツ庁
- 小中学生の運動に関する意識調査|全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)