部活動の地域移行(地域展開)とは?2026年からどう変わる?背景・現状・課題をわかりやすく解説
「部活動の地域移行」という言葉を聞いたことはありますか?
2026年度から本格的に始まるこの改革は、中学校・高校の部活動のあり方を大きく変えるものです。保護者や教員、地域の方々にとって知っておくべき重要なテーマです。
この記事では、スポーツ庁・文化庁の公式資料や最新の調査データをもとに、部活動の地域移行について背景・現状・先進事例・課題をわかりやすく解説します。
部活動の地域移行(地域展開)とは?
部活動の地域移行とは、これまで学校の教員が担ってきた部活動の指導を、地域のスポーツクラブや団体、外部指導者に移していく取り組みです。
2023年度から段階的に始まり、まずは休日の部活動から地域への移行が進められています。
なお、2025年5月に公表されたスポーツ庁の「最終とりまとめ」では、従来の「地域移行」から「地域展開」へと呼称が変更されました。学校から地域へ単に「移す」のではなく、地域全体でスポーツ・文化芸術活動の環境を広げていくという趣旨が込められています。
なぜ「地域移行」が必要なのか?
地域移行が進められている背景には、主に以下の問題があります。スポーツ庁・文化庁が令和4年12月に策定した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」では、これらの課題を踏まえ改革の方針が示されています。
1. 教員の働き方改革
部活動の指導は、教員にとって大きな負担となっています。
- 休日出勤が当たり前
- 専門外の競技を指導するケース
- 長時間労働の原因のひとつ
ガイドラインでは「活動の運営や指導が顧問の教員に任せきりにならない」体制づくりが求められており、教員が本来の授業準備や生徒指導に集中できる環境を整えるため、部活動の負担軽減が急務とされています。
2. 少子化による部員不足
少子化の影響で、1つの学校だけでは部員が集まらず、チームを組めない状況が増えています。
- 単独校ではチーム編成が困難
- 合同チームの調整が難しい
- 廃部になる部活動の増加
ガイドラインでは「少子化の中でも将来にわたり、生徒がスポーツ・文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を確保すること」が目的として掲げられています。地域単位でクラブを運営することで、複数の学校の生徒が一緒に活動できるようになります。
3. 専門的な指導の確保
教員が必ずしもその競技の専門家とは限りません。
地域の経験者や元選手が指導することで、より専門的で質の高い指導を受けられる可能性が高まります。元スポーツ庁長官の室伏広治氏も「子供たちが部活動を数年やって燃え尽きて引退するのではなく、生涯を通してスポーツに親しむ環境を作り、メンタリティも育まなければいけない」と述べており、地域の多様な指導者による長期的なスポーツ環境の整備が期待されています。
現在の進捗状況(2025年〜2026年)
改革のスケジュール
スポーツ庁と文化庁は、以下のスケジュールで改革を進めています。
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 2023年〜2025年度 | 改革推進期間:計画策定・準備・体制づくり |
| 2024年8月 | 「地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議」設置 |
| 2025年5月 | 実行会議「最終とりまとめ」決定。「地域移行」から「地域展開」に名称変更 |
| 2025年12月 | 新ガイドライン「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」公表 |
| 2026年〜2028年度 | 改革実行期間(前期):未着手自治体は休日の地域展開に確実に着手 |
| 2029年〜2031年度 | 改革実行期間(後期):さらなる推進と平日の改革 |
2025年12月に公表された新ガイドラインでは、改革実行期間内に原則すべての学校部活動で休日の地域展開を実現することが目標として掲げられています。また、市区町村が地域クラブを審査・認定する認定制度の創設も盛り込まれました。
自治体の対応状況
スポーツ庁が令和6年(2024年)5〜6月に実施したフォローアップ調査(回答:1,485市区町村)によると、以下の状況です。
休日の部活動
- 2025年度末までに 54% の部活動で地域連携・地域移行を予定(23,308部活動)
平日の部活動
- 2025年度末までに 31% の部活動で地域連携・地域移行を予定(8,767部活動)
自治体の体制整備
- 協議会を設置済み、または設置予定の自治体:全体の3/4以上
- 推進計画を策定済み、または策定予定の自治体:半数以上
- 実証事業に採択された自治体:339市区町村(2023年)→ 510市区町村(2024年)に拡大
休日から先行して進み、平日の移行は今後の課題となっています。
地域移行のメリット
生徒にとってのメリット
- 専門的な指導が受けられる
- 学校の枠を超えた仲間との交流
- 活動の選択肢が広がる(eスポーツやダンスなど新しい種目も)
教員にとってのメリット
- 休日の負担軽減
- 本来の業務に集中できる
- 専門外の指導から解放される
なお、新ガイドラインでは「希望しない教員の参加は禁止」と明記されており、教員の意思が尊重される仕組みが整備されつつあります。一方、希望する教員は兼職兼業の許可を得て、引き続き地域クラブで指導に携わることも可能です。
地域にとってのメリット
- 地域スポーツの活性化
- 指導者としての活躍の場
- 世代間交流の促進
先進事例に学ぶ
全国でさまざまな形の地域移行が始まっています。代表的な事例を紹介します。
神戸市(兵庫県)「KOBE◆KATSU(コベカツ)」
2026年9月に市内全中学校で部活動から「KOBE◆KATSU」へ完全移行を予定している、全国初の大規模自治体です。
- 平日・休日ともに地域クラブ活動に移行
- 活動時間:平日16時〜20時30分のうち2時間程度、休日は日中3時間程度
- 地域の団体が運営主体となり、教員以外の多様な指導者が参加
- 指導は3名以上で行うことが基本方針
渋谷区(東京都)「渋谷ユナイテッド」
2021年10月に一般社団法人「渋谷ユナイテッド」を設立。区立中学生が1981年の6,300人から1,800人に減少した背景で、学校の枠を超えた部活動を展開しています。
- ダンス、フェンシング、eスポーツ、将棋、料理・スイーツなど11クラブを運営
- 地域リソースを活用(ボウリング部は笹塚ボウル、料理部は服部栄養専門学校、将棋部は日本将棋連盟のプロが指導)
神栖市(茨城県)ハイブリッドモデル
令和6年9月に市内全中学校で一斉に休日の地域移行を開始。市が運営する「直営型クラブ」と既存スポーツ団体が運営する「自主運営型クラブ」を組み合わせたハイブリッドモデルを採用しています。指導者の約半数は兼業許可を得た教員が担当しており、段階的な移行の好例です。
地域移行の課題
一方で、地域移行にはまだ多くの課題があります。スポーツ庁のフォローアップ調査では、自治体が感じている課題として以下が挙げられています。
1. 指導者の確保(自治体の71.9%が課題と回答)
地域で部活動を支える指導者をどう確保するかが最大の課題です。
- 指導経験者が限られている
- ボランティアでは継続が難しい
- 資格や研修の仕組みが発展途上
スポーツ庁の実証事業データによると、現在の指導者の内訳は、現職教員が31%、民間の競技経験者が29%、地域スポーツクラブ職員が9%となっています。環太平洋大学の友添秀則教授(実行会議座長代理)は、コーディネーター組織と管理機能を担う人材の確保が不可欠であると指摘しています。
新ガイドラインでは、安全対策として性暴力・暴言・ハラスメント防止のための日本版DBS(無犯罪証明制度)の活用も視野に入れられています。
2. 費用負担の問題(自治体の59.4%が課題と回答)
学校の部活動は基本的に無料でしたが、地域クラブでは会費が発生するケースがあります。
スポーツ庁の実証事業調査によると、地域クラブ活動の月会費は以下の分布です。
| 月会費 | 割合 |
|---|---|
| 1,000円未満 | 約1/3 |
| 1,000円〜2,000円未満 | 約1/3(最多) |
| 3,000円以下 | 約85% |
多くのクラブが月額3,000円以下に収まっていますが、ガイドラインでは「家庭の経済状況に関わらず希望する生徒が幅広く参加できるよう留意」し、経済的に困窮する世帯への支援を確実に措置することが求められています。
3. 地域間格差
都市部と地方では、受け皿となるクラブや指導者の数に差があります。
- 地方では選択肢が限られる
- 移動距離・交通手段の問題
- 自治体の財政状況による差
この格差を埋めるために、戸田市(埼玉県)ではふるさと納税を活用したクラウドファンディング、長与町(長崎県)では企業版ふるさと納税による寄付を活用するなど、各自治体が独自の工夫を行っています。
4. 連絡・運営体制の課題(自治体の45.5%が課題と回答)
学校から地域クラブへ移行することで、連絡体制や情報共有の仕組みづくりが必要になります。
- 保護者への連絡方法
- スケジュールの共有
- 緊急時の対応
柏市(千葉県)では、制度概要の説明、生徒用の参加申込フォーム、指導者登録フォーム、兼職兼業の説明等を一元化したプラットフォームを構築し、運営のモデルケースとなっています。
まとめ
部活動の地域移行(地域展開)は、2026年度から本格的に始まる大きな改革です。
ポイントをまとめると:
- 教員の働き方改革・少子化対策として推進
- 2025年12月に新ガイドラインが公表、2026年度から「改革実行期間」に突入
- 休日の部活動から段階的に展開中(54%の部活動が2025年度末までに移行予定)
- 神戸市・渋谷区など先進事例が全国で拡大中
- 指導者確保・費用負担・地域格差などの課題に取り組みが進む
地域展開がスムーズに進むためには、学校・地域・保護者の連携と情報共有が欠かせません。
今後の動向を注視しながら、子どもたちにとって最適なスポーツ・文化芸術環境を一緒に考えていきましょう。
参考資料: