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保護者向け10 分

父親の参加率はなぜ低いのか──部活動・少年団における保護者のジェンダーギャップ

#父親#参加率#保護者#ジェンダー#部活動#育児

「保護者会に来るのはいつもお母さんばかり」 「お父さんは試合のときだけ来る」

部活動や少年団の保護者活動に、こんな印象を持っていませんか?

笹川スポーツ財団の2021年調査は、この「印象」を数字で裏付けています。子どもの送迎への関与率は、母親 89.2% に対して父親は 56.4%。ユニフォームの洗濯に至っては、母親 84.4% に対して父親はわずか21.2%──実に63.3ポイントもの差があります。

なぜ、これほど大きな格差が生じているのでしょうか。そしてこの格差は、子どもや家庭にどのような影響を与えているのでしょうか。

この記事では、父親の参加率が低い構造的な要因を分析し、より公平な関わり方のあり方を考えます。

データが示す「母親偏重」の実態

笹川スポーツ財団の調査から

笹川スポーツ財団が2021年に実施した「小学生のスポーツ活動における保護者の関与・負担感に関する調査研究」は、保護者の関与にある明確なジェンダーギャップを浮き彫りにしています。

活動内容 母親の関与率 父親の関与率
子どもの送迎 89.2% 56.4% 32.8pt
ユニフォームの洗濯 84.4% 21.2% 63.2pt
食事・飲み物の用意 74.4% 31.6% 42.8pt
試合・練習の観戦 70.0% 55.2% 14.8pt
スポーツ用品の購入 66.6% 42.2% 24.4pt
練習のサポート 30.0% 30.6% -0.6pt

注目すべきポイントがいくつかあります。

父親の関与率が母親に近いのは「観戦」と「練習のサポート」のみ。試合を見に行ったり、キャッチボールの相手をしたりといった「楽しい」「やりがいがある」活動には参加するが、日常的な裏方仕事(洗濯、食事準備、送迎)は母親に偏っているという構図です。

練習のサポートでは唯一、父親の関与率(30.6%)が母親(30.0%)をわずかに上回っています。これは、技術的な指導やコーチに近い役割に父親が参加しやすいことを示唆しています。

負担感にも格差がある

同調査では、送迎に対する負担感についても大きな差が見られます。

  • 母親で送迎に負担を感じている割合:66.7%
  • 父親で送迎に負担を感じている割合:43.7%

この差は、単に「父親のほうがタフ」ということではありません。関与の頻度と深さが異なるため、感じる負担感にも差が出ていると考えるのが自然です。毎週送迎している母親と、月に数回だけ参加する父親では、負担の実感が異なるのは当然でしょう。

父親の参加率が低い5つの構造的要因

1. 長時間労働の壁

父親の参加率が低い最大の要因は、日本の労働文化にあります。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」(令和5年)によると、日本の一般労働者の月間実労働時間は162.3時間(所定外労働時間を含む)です。OECD(経済協力開発機構)の2022年データでは、日本の年間労働時間は1,607時間で、ドイツ(1,341時間)やフランス(1,511時間)と比較して依然として長い水準にあります。

さらに問題なのは、労働時間の分布です。総務省の「社会生活基本調査」(令和3年)によると、6歳未満の子どもを持つ夫の1日あたりの家事・育児関連時間は1時間54分にとどまります。一方、妻は7時間28分と、約4倍の差があります。

この圧倒的な時間の非対称が、部活動の保護者活動にも直接反映されています。

  • 平日の練習後の送迎に間に合わない
  • 休日出勤や持ち帰り仕事がある
  • 疲労のため、休日は休息に充てたい

2. 「育児は母親の仕事」という意識

内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」(令和4年)では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考え方について調査しています。

  • 「賛成」「どちらかといえば賛成」:33.5%
  • 「反対」「どちらかといえば反対」:64.3%

数字の上では反対が多数派になっています。しかし、依然として3人に1人が伝統的な性別役割分業を支持しているのです。

さらに重要なのは、意識と行動の乖離です。「性別役割分業に反対」と回答した人でも、実際の家事・育児の分担は偏っているケースが少なくありません。

部活動の保護者活動においても、「お母さんがやるものという暗黙の前提が存在しています。

  • 保護者会の連絡が母親宛に届く
  • LINEグループに登録されるのは母親
  • 「お母さん同士」での打ち合わせが前提になっている
  • 父親が参加すると「珍しい」と言われる

こうした環境では、関わりたいと思っている父親でも参入しにくいと感じてしまいます。

3. 保護者コミュニティの「母親文化」

部活動や少年団の保護者コミュニティは、長年にわたり母親中心で形成されてきました。

  • 保護者会の役員は母親が務めることが多い
  • お茶当番、差し入れなど「母親的な役割」が中心
  • 保護者同士の関係性が母親間のネットワークで成り立っている
  • 話題や雰囲気が母親同士のコミュニケーションスタイルに最適化されている

こうした環境に父親が入っていくことは、社会心理学的な意味でのマイノリティになることを意味します。

社会心理学者のロザベス・モス・カンター(1977年)が提唱した「トークニズム(token theory)」によれば、集団内で少数派(15%未満)の立場に置かれた人は、目立ちすぎるプレッシャー、ステレオタイプの適用、排除の感覚を経験しやすいとされています。

保護者会における「数少ない父親」は、まさにこのトークン的な立場に置かれやすく、居心地の悪さを感じて足が遠のくという悪循環が生まれます。

4. 「父親の役割」の固定観念

興味深いのは、父親が参加する場合の役割の偏りです。

笹川スポーツ財団の調査データでも見たように、父親の関与率が高いのは「試合の観戦」や「練習のサポート」です。逆に、「洗濯」「食事準備」「送迎の調整」といった活動では関与率が低い。

ここには、「父親はスポーツの技術的な面で関わるもの」「裏方仕事は母親がやるもの」という固定観念が反映されています。

  • 父親=コーチ、審判、技術指導
  • 母親=当番、送迎、洗濯、お茶出し

この固定観念は、父親にとっても母親にとっても選択肢を狭めるものです。裏方仕事をしたい父親も、コーチとして関わりたい母親も、この枠組みの中では動きにくくなります。

5. 職場の理解不足

子どもの部活動のために仕事を調整することへの職場の理解も、大きな壁です。

厚生労働省の「雇用均等基本調査」(令和5年度)によると、男性の育児休業取得率は 30.1% に達し、年々上昇しています。しかし、取得期間は2週間未満が約半数を占め、長期取得は依然として少数派です。

育児休業ですら十分に取得できていない現状で、「子どもの部活動の当番があるので早退しますと言える父親がどれだけいるでしょうか。

  • 有給休暇を「子どもの送迎」で取ることへの抵抗感
  • 「母親が行けばいいのでは」という職場の暗黙の圧力
  • 育児関連の休暇を取る男性への偏見(「パタニティ・ハラスメント」)

父親が関わることで生まれる変化

子どもへの影響

父親がスポーツ活動に関わることの効果は、複数の研究で指摘されています。

内閣府の「父親の子育て参加」に関する調査や、各種の発達心理学研究からは、父親の育児参加が子どもに以下のようなポジティブな影響を与えることが示されています。

  • 自己肯定感の向上:父親から認められる経験が自信につながる
  • 社会性の発達:異なるコミュニケーションスタイルに触れることで対人能力が広がる
  • ストレス耐性の強化:父親との遊びや運動が情動調整能力を高める
  • 学業成績の向上:父親の関与が高い家庭の子どもは学業成績が良い傾向がある

特にスポーツ活動においては、父親が応援に来てくれることへの子どもの喜びは大きいものです。「お父さんが見に来てくれた」という経験は、子どもの記憶に長く残ります。

母親の負担軽減

父親の参加率が上がれば、当然ながら母親の負担が軽減されます。

笹川スポーツ財団の調査で母親の送迎負担感が66.7%に達しているのは、送迎の大部分を母親が担っているからです。父親と母親が対等に分担すれば、一人あたりの負担は大幅に減ります。

厚生労働省の調査では、共働き世帯は2023年時点で全体の約7割を占めています。共働きでありながら保護者活動の負担が母親に偏っている現状は、構造的な不公平と言わざるを得ません。

チーム運営の多様化

父親の参加が増えることで、チーム運営そのものが変わる可能性があります。

  • 仕事で培ったプロジェクト管理やICTのスキルを運営に活かせる
  • 「前例踏襲」ではなく合理的な改善提案が出やすくなる
  • 母親だけでは気づかなかった新しい視点が加わる
  • 保護者全体の運営リソースが増える

ただし、これは「父親のほうが合理的だから」という意味ではありません。多様な視点が入ること自体が、組織を健全にするのです。

父親の参加を促すための具体策

1. 連絡先を「母親だけ」にしない

最もシンプルで効果的な第一歩は、情報を両親に届ける仕組みをつくることです。

  • 保護者LINEグループに父親も登録する
  • 連絡メールの宛先を両親宛にする
  • 保護者会の案内を「お母様」ではなく「保護者の皆様」に変更する
  • 専用の連絡ツールを導入し、家族単位でアカウントを作成する

「情報が来ない」から「知らなかった」→「関わらなかった」という情報の不均等を解消するだけで、参加率は変わります。

2. 「お父さん限定」の役割をつくらない

父親の参加を促すために「お父さんコーチ」「パパ審判」といった父親限定の役割を設けるケースがありますが、これは注意が必要です。

  • 「父親=スポーツ・力仕事」の固定観念を強化してしまう
  • 裏方仕事が引き続き母親に偏る
  • 参加のハードルが上がる(「コーチは無理」と尻込みする父親も多い)

むしろ大切なのは、すべての役割をジェンダーニュートラルにすることです。送迎も、洗濯も、会計も、コーチ補助も、性別に関係なく分担できる仕組みにすべきです。

3. 参加しやすい時間帯と方法を用意する

長時間労働の壁を超えるために、参加の形を柔軟にしましょう。

  • 保護者会を平日夜のオンライン開催にする(出席率が上がる)
  • 当番を半日単位にする(午前だけ、午後だけ)
  • 「現場に行く」以外の貢献方法を用意する(会計処理、資料作成、ウェブ管理など)
  • 年間を通じた貢献ポイント制にし、参加方法を選べるようにする

4. 父親同士のネットワークをつくり、チーム全体で支える

保護者コミュニティが母親中心の環境に、一人で飛び込むのはハードルが高いものです。チーム内で父親同士が顔を合わせる機会を設け、すでに参加している父親が新しい父親を誘う仕組みをつくりましょう。社会心理学の知見でも、同じ立場の仲間がいることがマイノリティの参加意欲を高めることが示されています。

また、父親の参加率は個人の努力だけでは解決しません。当番のシフト調整を柔軟にし、「仕事で行けない」を受け入れる文化や、「参加できなくても別の形で貢献できる」ことを明文化するなど、チーム全体で働く保護者を支える文化をつくることが必要です。

社会全体で変えていくべきこと

社会全体の変化と地域移行

父親の参加率が低い問題は、個人の意識の問題ではなく、社会構造の問題です。長時間労働を前提とした雇用慣行、「男性稼ぎ主モデル」を前提とした制度設計、育児に関わる男性への偏見──これらの構造を変えていくためには、職場、学校、地域、家庭のすべてのレベルで意識と仕組みの変革が必要です。

政府も対策を進めています。2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、男性の育児休業取得率を2030年までに 85% にするという目標が掲げられています。

スポーツ庁が推進する部活動の地域移行は、保護者の関わり方にも変化をもたらす可能性があります。

地域のスポーツクラブとして運営される場合、有給スタッフによる運営が前提になります。保護者のボランティアに過度に依存しない運営体制が整えば、「母親だけが負担を背負う」構造も変わっていくでしょう。

まとめ

部活動・少年団における父親の参加率の低さは、個人の怠慢ではなく、長時間労働、ジェンダー意識、コミュニティの構造という複合的な要因によるものです。

データが示す現実:

  • 送迎の関与率:母親89.2% vs 父親56.4%(32.8ポイント差)
  • ユニフォーム洗濯:母親84.4% vs 父親21.2%(63.2ポイント差)
  • 父親の関与は「観戦」「練習サポート」に偏り、裏方仕事は母親に集中
  • 6歳未満児を持つ夫の家事・育児時間は妻の約4分の1

参加率が低い構造的要因:

  • 日本の長時間労働が物理的な壁になっている
  • 「育児は母親」という意識が行動にも残っている
  • 母親中心の保護者コミュニティに入りにくい
  • 父親の役割が「コーチ」「力仕事」に固定化されている
  • 職場の理解が十分でない

父親の参加を促すためにできること:

  • 情報を両親に届ける仕組みをつくる
  • 役割をジェンダーニュートラルにする
  • 参加しやすい時間帯と方法を用意する
  • 父親同士のネットワークをつくる
  • チーム全体で働く保護者を支える文化を醸成する

大切なのは、「お父さんもやるべきだと責めることではなく、参加したくなる仕組みと環境をつくる」ことです。母親だけが当たり前のように負担を背負う時代は終わりにしましょう。父親も母親も、それぞれの状況に合わせてできる形で関わる──それが、これからの保護者活動のあるべき姿です。


参考資料:

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